思い出と一緒に咲くの…
白い花が咲いていた。
優しい風に
身をまかせ
ゆらゆらと
嬉しそうに
風と戯れ
ゆらゆらと。。
時に花は…
思い出と
一緒に咲くの。。
秋分の日が過ぎ
暦の上では
秋を迎える頃
場所を
決めることなく
可憐な花を咲かす
夏百合(シンテッポウユリ)。
幾度と巡る季節…
訪れる度
花を咲かせ
思い出と一緒に
咲く花達。
大正…昭和…
そして平成…令和と
4つの時代を
生きぬいてこられた
その方の
凛とした姿と
優しい微笑み。
その方の家先には…
一輪の
夏百合が咲いていた。
「いってらっしゃい」
「おかえりなさい」
…と夏百合の声。。
その方には…
聞こえて
いたのでしょうね。
「おかげさまね」
…と夏百合に
声をかけて
みえました。
そぅ…
「おかげさまね」と。
「この花はね…
どこからともなく
やって来て
手もかけて
いないのに
花を咲かせて
くれたのよ。
いつも…
私を送っては
迎えてくれる。
おかげさま…
おかげさまね」
「おかげさま」
感謝の気持ちを
伝える言葉。
風と戯れ
咲いていた。
スッとのびた姿と
白いカールの
可憐な夏百合。
凛とした姿と
柔らかな
微笑み。。
風と戯れ
咲いている
夏百合に重ねる…
今は亡き
その方の面影。。
今年も…
夏百合と言葉を紡ぐ
季節がきたね。
「いってらっしゃい」
「いってきます」
「おかえりなさい」
「ただいま」
「おかげさま…」
「おかげさまね」